HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ 令和8年3月号
うみねこ通信 No.321 令和8年3月号
どうしてたくさんの本数に採血するの?
中央検査部 主任検査技師 高木 友幸
- 病院で診察を受けるときや健康診断の時に採血検査を受けたことがあると思います。検査項目に応じて必要な採血容器(採血管)を使い分けていますが、時々採血室で患者さんから「5本も採血したら血がなくなっちゃうよ」というようなことを言われることがあります。「1本で全て検査できないの?」と思う方もいるかもしれません。そんな採血の事についてちょっと述べてみたいと思います。
- 血液を検査することで体の状態を知ることができます。例えば次のような検査があります。
- 生化学:体内で作られる酵素やホルモンを調べて、肝臓や腎臓の状態などを知ることができます。また体内のナトリウムやカリウムなどの濃度も知ることができます。
- 血 算:血液中の赤血球や白血球などの細胞数や種類を調べます。貧血の状態もわかります。
- 凝 固:血液の固まりやすさを検査します。また、血液の流れを良くするお薬の効果もわかります。
- 赤 沈:血液中の赤血球が沈む速度を調べて、炎症の有無を判断します。
- 血 糖:血液中のブドウ糖の濃度やヘモグロビンA1c(1~2ヶ月前の血糖の状態がわかる)を調べる時に使います。
- これらを調べるだけでも5本の採血管に採血する必要があります。血液は体外に出てしまうと固まってしまいます。例えば血算の検査では血液が固まってしまうと検査が出来なくなってしまうため、体内と同じ状態に保つためにEDTA 2NaやEDTA 2Kなどの血液が固まらないようにする抗凝固剤と呼ばれるお薬が入った採血管を使います。この抗凝固剤にはNa(ナトリウム)やK(カリウム)が含まれているため、この採血管を使ってナトリウムやカリウムを調べることはできません。別の採血管を使う必要があります。また、採血後の血液を放置して測定までの時間が長くなってしまうと、赤血球などの血球成分が糖分を使ってしまい血糖値が減少してしまいます。これを防ぐために血糖測定用の採血管にはフッ化ナトリウムと呼ばれる抗凝固剤が使われています。生化学検査では「血清成分」を使って検査を行います。血清は抗凝固剤を使っていない採血管で採血をし、血液が固まってから遠心分離を行って得られますが、血液が固まるまでに時間がかかってしまうと検査結果の報告が遅くなってしまうため、生化学検査の採血管には血液を固まりやすくするお薬が使われています。これらのことより1本の採血管で全ての検査ができると採血量が少なくて済むと思いますが、正確な検査結果を報告するためには検査の種類によって必要な採血管を使い分ける必要があることになります。採血管によって違いますが、1本の採血管の容量は2~10ml程度で、1回の採血で20ml程度の採血が行われます。料理で使う大匙1杯とちょっと程度の量になります。一般的に体内を流れる血液の量は、体重のおよそ1/13(男性で体重の約8%、女性で体重の約7%)と言われています。例えば体重50kgの方で男性は約4000ml、女性は約3500mlの血液が流れています。血液は毎日新しく作られています。 健康な人が全血献血をする場合、400mlか200mlを採血しますが、それに比べれば採血量はごくわずかです。採血管の本数が多くなると大量の血液を採血していると感じるかもしれませんが、検査に必要な量を考えて採血をしていますので、安心して採血検査を受けてください。また、採血後に気分が悪くなった際は遠慮なくお申し出ください。
