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うみねこ通信 No.313 令和7年7月号

体の痛みと心の痛みについて

整形外科部長 油川 修一

 腰椎椎間板ヘルニアで腰と脚の痛みが辛く当院に受診される患者様が多くいらっしゃいます。椎間板ヘルニアの多くは手術をしなくても改善する場合が多い疾患なのですが、患者様の多くは辛い痛みに加えて病気や怪我の先行きがわからない不安と今後の仕事への影響の心配で肉体的にも精神的にも弱っている方が多い印象です。
そういった患者様に、椎間板ヘルニアの多くは自然回復が多い事や仕事復帰の見通しなどを説明すると痛みを和らげる治療をしていないにもかかわらず痛みの辛さが和らぎ明るい表情で帰宅されるケースがよく見られます。
体の痛みの辛さとそれによって生じた心の痛みが患者様の辛さをより強くしているのです。

■ 体の痛みと心の痛み
心と体の痛みは、別々のもののように感じられるかもしれませんが、実は密接につながっています。体の痛みが長引くと気分が落ち込み心の痛みにつながることもあれば、逆に心のストレスが続くと体に不調が出ることがあります。最近の研究では、心の痛みを感じたときに脳の中で反応する部分が、体の痛みのときと同じ場所であることもわかってきました。

■ 不安感が体の痛みに与える影響
1.神経の過敏化
不安が長引くと、脳の痛みを感じるセンサー(痛覚閾値)が下がる傾向があります。つまり、普段なら気にならないような刺激も「痛い」と感じやすくなります。これは「中枢性感作」と呼ばれる状態です。それにより慢性痛(腰痛・関節痛・線維筋痛症など)が悪化しやすくなったり、不安の高まりとともに痛みの訴えも強くなる傾向になります。

2.悪循環が生まれる
 不安 → 神経の過敏化 → 体の痛みの悪化 → さらなる不安 → 痛みの悪化という心と体の悪循環に陥るケースがあります

■ どう対処すればいいのか?
体の痛みに対して適切な治療を受けることはもちろんですが、痛みやしびれが辛い場合は病気自体の予測される経過やそれに伴う仕事や日常生活への影響について担当医に質問しアドバイスをもらうようにして少しでも心の痛みを和らげましょう。そうして病気が許せば運動や趣味など自分の心が喜ぶ事を怖がらずに再開しましょう。そうすることで今感じている体の痛み自体も和らぐ可能性もあります。

■ 最後に
不安は「見えない心の反応」ですが、それが確実に体に「痛み」として表れることがあります。心と体をセットでケアする視点がとても大切です。
あなたが感じている不安や痛みには、ちゃんと意味があり、無理に我慢せずに相談できる場所や人がいるということを忘れないでください。
 

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