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うみねこ通信 No.316 令和7年10月号

安全第一MRI

中央放射線部 主任放射線技師 藤島 広志

2025年7月に米ニューヨーク州ナッソー郡で、首に金属製の鎖をつけていた男性(61歳)が、MRI装置に引っ張られて、翌日死亡する事故が発生しました。被害者は、トレーニング用として、首に約9㎏の金属製の鎖をつけていました。膝の検査を終えた妻が立ち上がるのを補助しようとしてMRI検査室に入った際の事故になります。

この事故を推測するとこの男性はMRI検査中以外、磁場は発生していないと勘違いしていた、又はいつもの様に妻を手助けしようと反射的にMRI室内に入ってしまったのでしょう。そして妻のもとに近づく途中、一瞬で首からMRI装置に引き込まれたと考えられます。そして金属製の鎖とMRI装置に強力な力で挟まれた状態となった事から、救出に難航して1時間も要した様です。この時の9㎏の金属製の鎖がMRI装置(1.5テスラ)に吸着している力は他施設の実験データをもとに算出すると1,125㎏(軽自動車1台分に相当)になります。金属であっても磁石に吸着しない金属であればこの様な事故は起こりません。しかし、金属にはMRI検査時に生じる電磁波による発熱という問題も有ります。原理でいうと電子レンジに似ていて、人体も多少発熱しますが金属の場合は、種類や形状によっては火傷を引き起こすほど高温になる可能性があります。

更にMRI画像において金属は、その周囲の組織を含めて真っ黒に描写されるため画像診断の妨げにもなります。ここまでのお話でMRI検査において、金属が如何に危険で不要な存在であることが理解して頂けたと思います。

MRI検査を安全に行う為には、金属を排除すれば解決されます。アクセサリー(指輪、ネックレス、ピアス、ヘアピン)、入れ歯、コルセット、補聴器、腕時計等は外して頂きます。しかし、金属であっても金属として認識されていないと、金属を身につけて検査することになります。例えば女性下着の肩紐調整部がプラスチックと思い込んでいる場合や本人も気づいていない衣類のチャックやボタン等があります。その為、男女共にシャツ、パンツ、靴下以外は全部脱いで検査着に着替えをお願いしております。これらの事を怠るとMRI検査においては簡単に事故が発生します。

それともう一つ皆さんに知って頂きたいことがあります。以前、ペースメーカを埋め込んだ患者はMRI検査の電磁波によりペースメーカ本体の故障、誤動作、発熱により生命を脅かす可能性があるため検査不可(MRI非対応機種)になっていました。現在ではMRI対応ペースメーカやMRI対応植込み型心臓モニタ等がスタンダードとなっており実際に埋め込んだ患者が増えてきています。しかし、それらの装置を埋め込んでいる患者は無条件でMRI検査を受けることが出来ません。MRI検査をする必要が生じた際、ペースメーカ管理医師や、放射線科の医師や担当スタッフは、他のいくつかの条件を全て満たしているかどうかも確認をします。そして、全ての条件を満たしていることが確認できた場合に限り、MRI検査を行います。残念ながら、医師がMRI検査のための条件を満たしていないと判断した時は、MRI検査を実施することはできません。つまり条件付きでMRI検査が可能という事になります。その条件はMRI対応ペースメーカやMRI対応植込み型心臓モニタ等を植え込んだ病院からお渡しされる手帳と確認カードから判断することになりますので両方とも必ず持参してください。

MRI検査は病気やケガの有無、病状の把握に有効な精密検査です。そしてX線を使わないので被ばくの心配も必要がありません。しかし電磁波や強力な磁場を利用している以上、安全な検査となるための注意が求められます。冒頭のような事故の話を耳にすると怖いと思われるかもしれませんがMRI担当者は日々、検査の安全性に関して細心の注意を払っております。MRI検査に関して心配なことが有る場合、遠慮なく医師又はMRI担当者までご相談下さい。
 

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