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うみねこ通信 No.16 平成12年10月号

血尿と前立腺癌

泌尿器科部長  城戸 啓治

血尿を見たら

血尿には顕微鏡的血尿と肉眼的血尿があります。健診で尿潜血(+)や(++)は、殆どの場合顕微鏡的血尿です。これに対し目で見て赤い場合が肉眼的血尿で、血のかたまりが混じることもあります。高血圧、浮腫、蛋白尿などがあるかどうかでも異なりますが、顕微鏡的血尿は、ふつう異常無しか内科的疾患によることが多く、泌尿器科的疾患は2%程にすぎません。但し、重要なことはその中に腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌などの尿路の癌が含まれること、また腎・尿管結石などの治療を要する疾患がまぎれている場合があることです。検尿(沈査までみて尿中の赤血球を直接数える)・尿細胞診(尿中の癌細胞の有無をみる)・超音波検査(腎・膀胱・前立腺)が初診時のスクリーニング(一次検査)として用いられますが、腎盂撮影・膀胱鏡検査が必要なこともあります。一般的に血尿の原因疾患は上部尿路(腎・尿管)30%、下部尿路(膀胱・尿道)70%といわれていますが、全尿路をスクリーニングすることが大切です。これに対し肉眼的血尿では他に症状が無い場合でもなんらかの泌尿器科的疾患の存在が強く疑われ、急いでその原因を精査する必要があります。血尿はふつう間歇的である場合が殆どなので数回あるいは数日で消失したからといって放置するのは大変危険です。血尿を見たら泌尿器科へ!

採血のみで可能な前立腺癌のスクリーニング

市の健診センターでも平成9年から50才以上の男性を対象に前立腺特異抗原PSAと略す)の測定を開始していますが(勿論これは当院をはじめどこの病院でもうけられます)、採血のみの検査で特異性が高く前立腺癌のスクリーニングとして大変有用です。前立腺癌は生活様式が欧米化するにつれて近年急速に増加する傾向にあり、90年代にはマーカーとしてのPSAの導入によりさらに発見される機会が増えています。正常値をいくらにするかは測定法や年齢で多少差のあるところですが、一般的には、4.0ng/ml以下は正常(50才以上の男性で93%はこの範囲に入り前立腺癌の有病率は0.2%といわれています)、4.1~10.0は所謂grey zone(境界域)といわれ、対象者の5%がこの値をとり癌有病率は10~15%とされています。即ちgrey zoneでは精査をすると7~10人に1人の割合で前立腺癌が発見されるということになります。10.1以上の値は2%程ですがこの範囲での癌有病率は40%(20.1以上ではほぼ100%)とされています。

従来前立腺癌はホルモン療法(男性ホルモンの作用を打ち消すような治療)が、治療の初期には有効なため比較的予後の良い癌と考えられがちでしたが、進行癌での予後は決して良くないことが分かってきました。しかしgrey zoneで発見された前立腺癌は前立腺内に限局し、根治的前立腺全摘出術の適応となる早期例が多く、手術を受けた患者さんの生命予後は極めて良好なことから、二次検査(精査=前立腺生検とほぼ同義)の意義があるとおもわれます。但し、PSAは前立腺肥大症や前立腺炎でも高値をとることがあり、癌との鑑別が必要です。前立腺の体積あたりのPSA 値で、ある程度の鑑別は可能ですがそれはgrey zoneの患者さんの10%程度に過ぎず、やはり生検が必要な場合は少なからずあります。生検は2ヶ所よりは4ヶ所、4ヶ所より6ヶ所から採取したほうが診断率は高く、(6ヶ所と8ヶ所はほぼ同率)、6点生検を正確に行っている施設(出来れば根治的前立腺全摘出術の施行可能な施設)で検査を受けることも大切です。癌の場合には排尿障害(尿道面・膀胱頚部への浸潤)や腰痛(骨盤骨・脊椎骨への転移)などの症状がでてからでは進行していることが多いため、手術の適応となることは殆ど無く、早期発見のためにはやはり無症状のうちにPSAの採血検査を受けるのが最も有用であることを知っておいて下さい。50才以上でPSA検査を希望される場合は、当院健診部又は泌尿器科でその旨声をかけていただければOKです。50過ぎたら一度は受けようPSA検査!

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