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うみねこ通信 No.287 令和5年5月号

フレイル予防 ~健康寿命を延ばすために

糖尿病・内分泌内科部長 川原 昌之

みなさんは健康寿命をご存知でしょうか?健康寿命とは、世界保健機関 (WHO)が提唱した「医療や介護を必要とせず元気に自立して過ごせる期間」の ことで、平均寿命(0歳時点での平均余命)とは異なります。わが国は世界一の長寿国で、2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳であり、平均寿命と健康寿命の差は9~12年程度です。つまり、男女とも約10年間は寝たきりや要介護など、健康上の理由で生活に制限がかかる方が多いという現状があります。超高齢化社会においては、健康寿命を延ばすことが重要であり、そのカギとなるのがフレイル予防です。

フレイルとは、日本老年医学会が提唱した概念で、虚弱を意味する英語「フレイリティ」を語源としています。加齢により心身が老い衰えた状態を意味し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能の障害が出現した状態ですが、一方で適切な介入や支援により生活機能の維持・改善が可能な状態像です。健康と要介護の間の状態であり、高齢者の多くはフレイルの段階を経て要介護状態へ進みます。また、フレイルは身体的な衰えだけでなく、歯や口の衰え(オーラルフレイル)や「何かをするのがおっくうになる」といった精神面の変化や認知の衰え、人付き合いの減少や閉じこもりといった社会性の衰えなど、多面的な問題を含んでいます。フレイルは徐々に進行し、様々な衰えが表れますが、その兆候に早く気付き、適切に対処して維持・改善につなげることが重要です。
フレイルを予防するためには、①バランスの良い食事、②適度な運動、③社会 参加の3つが重要です。

①主食(ご飯、パンなど)・主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)・副菜(野菜、海藻、きのこなど)をそろえた食事で、特に主菜に多く含まれるタンパク質は筋肉を作る材料となるため、フレイル予防には重要です。また、普段からあまり噛まない習慣があると、味覚の低下や噛む力が衰えることで偏った食事や質素な食事となり、栄養バランスの崩れから健康を損ねてしまう結果となるため、よく噛んで食べることが重要です。よく噛むことは脳に刺激を与えることで認知症の予防にもなります。

②骨を強化し筋力をつけることが目的で、寝たきりの原因となる転倒を予防するためにも重要です。ウォーキングやストレッチなど筋力の維持に役立つ運動を、体調に合わせて無理のない範囲で行うのがよいでしょう。また、農作業や庭の手入れ、家事など、日常生活の中で細めに動くことも効果的です。

③昨今のコロナ禍における外出自粛がよい例ですが、外出する機会が減り、社会的なつながりを失うとフレイルを発症しやすくなります。友人や家族とコミュニケーションをとる、ご近所付き合い、地域活動などで人と交流する機会を積極的に作りましょう。行動範囲を狭めないことも大切です。コミュニケーションをとり、笑顔になることはストレスの軽減にもつながります。

フレイルを予防することで健康寿命が延び、いつまでも元気に生き生きと過ごすことができます。これからの生活にぜひ取り入れてみてください。
 

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