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うみねこ通信 No.285 令和5年3月号

病理解剖

検査科 病理専門医 山岸 晋一朗

世間ではあまり知られていない病理医ですが、その仕事の一つに、病理解剖があります。一般の方は、病理解剖にはなじみがうすいのではないかと思いますが、今回は病理解剖について書いてみたいと思います。

【解剖の種類】
解剖にはいくつかの種類があります。病理医が行うのは病理解剖で、病気を主体に調べるものです。診断は正しかったか、死因がなんだったか、治療はうまくいっていたか、等々、調べることはいっぱいありますが、病気を中心に検討します。
一方、法医学者が行う法医解剖というのがあり、これは司法解剖と行政解剖とに区別されます。司法解剖は、犯罪性のある、またはその疑いのある死体の、死因などの解明を目的として行われます。行政解剖は、死因のはっきりしない異常死体の死因の究明を目的として行われます。滅多にありませんが、病理解剖も行政解剖も、途中で事件性が出てきた場合には、司法解剖に変わります。
さらに、系統解剖というものがあり、これは、身体の正常な構造を学ぶ事を主たる目的として、大学の解剖学教室で行われる解剖のことです。

【病理解剖の有用性】
病理解剖は、先に書いたように、死因の解明、診断の正確性の評価、治療効果の判定などに対して、非常に有効な手段です。画像診断が進歩した現在でも、病変を直接みることの有用性は論を待ちません。また、主要な臓器、組織は保存しておくので、後に新たな知見が得られた場合、保存しておいた臓器組織から、再評価することも可能です。
日本では、全国の大学、主要な病院で行われた病理解剖症例について、臨床情報とともに剖検診断の登録が行われています。そして「日本病理剖検輯報」という刊行物として、1958年から毎年出版されています。剖検輯報は、医学のみならず、さまざまな分野の方にとって、研究の重要な情報源となっています。

【病理解剖の必要性】
研修医が研修を終了するためには、病理解剖を行った症例を、臨床病理検討会で発表することが義務づけられています。医師になるためには、病理解剖は必ず通らねばならない関門です。
さらに、専門医などになるためには、専門医試験を受けて合格する必要があるのですが、内科学会では、受け持ち症例を病理解剖している事を、内科専門医受験資格の条件の一つにしています。
医師個人の資格取得という面で必要というだけでなく、病院にとっても、病理解剖を行わなければ、研修医を受け入れて、育てることができなくなります。また、癌拠点病院の指定を受ける場合、剖検症例の臨床病理検討会を一定数以上開催することが要求されています。

【最後に】
病理解剖というのは、医師に対するテストのようなものです。診断が正しかったか、治療がうまくいっていたか、見逃している病変がなかったか、病理解剖により、ごまかしようのない答えが出てきます。研修医の修了条件や専門医受験資格、更には特殊な病院の指定を受けるためにも病理解剖が必要ということは、医師個人にしろ病院にしろ、その質を上げるために、病理解剖により自己評価をきちんと行うことを要求されているといえます。
病理解剖について、多少なりともご理解が得られれば幸いです。
 

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