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うみねこ通信 No.206 平成28年8月号

肺がんのCT検診

放射線診断科部長(副院長) 伊神 勲

1993年に東京都予防医学協会「東京から肺がんをなくす会」が発足し、世界ではじめて低線量肺がんCT検診が始まりました。検診当初よりCTは胸部X線写真よりも10倍多く肺がんを発見してきました。以前は懐疑的であった米国から、5年ほど前に胸部X線検診vs低線量CT検診の無作為化比較試験が行われ、X線検診に比べCT検診で肺がん死亡数が約20%減少するという報告がありました。

当時よりCT装置の開発・進歩は目覚ましく、現在では一回の息止めで肺野全体を数秒で撮影できるようになりました。同じ範囲を撮影する場合、短時間で撮影すると結果的に低被曝で撮影できます。さらに、スーパーコンピュータ並に進歩した演算装置を持ったCTは、逐次近似法という計算方法で、放射線の線量を約60%下げても従来と同等の画像が得られています。そもそも検診とは、正常人を対象とする検査であり、より非侵襲であることが望まれます。
CT検査は必然的にX線被曝を伴うものであり、より低線量であることが求められます。胸部単純X線写真の被曝は約0.1ミリシーベルト(mSv)です。通常の胸部CTは被曝量は15~20mSvです。現在のほとんどのCTは、2mSv以下の低線量撮影ができます。今後もCTの進歩は続いていきますので、いずれ胸部X線検査と同等の被曝量で撮影が可能になる日が来ると思われます。

2016年国立がんセンターがまとめた推計値では、日本で年間肺がんに罹る人は133,800人と2番目の多さです。1番目は大腸癌の147,200人です。癌による年間死亡数の1番は肺がんで77,300人です。ちなみに2番は大腸癌で57,600人です。肺がんよりも大腸癌の方が治り易い病気と言えます。そして、大腸癌と肺がんは今後も増加傾向にあります。なぜ肺がんは治りにくいのでしょうか。それは発見時に進行癌となっているからです。肺がんで確実に治る早期がんとは、大きさが2cm以内でリンパ転移のない状態です。そして、CTでは淡いすりガラス状に見える陰影です。このような陰影は、決して胸部X線写真では見えません。胸部X線写真で発見される肺がんは、ほとんどが治らない進行した肺がんです。

八戸市総合検診センターでは、毎年約65,000人前後の方が、一般検診、肺がん検診(CT検診は1,200人程度)を受診されています。肺がんの発見数は、平成22年度から25年度までのデータによると、21例、20例、26例、19例、34例と増加傾向にあります。そのほとんどが進行肺がんで、2~3割の方がⅠ期肺がん(一部早期肺がん)として手術されています。癌検診の最終目標は死亡率の低下です。そのためには多くの住民が検診を受け、治る早期癌を多く発見することが肝要です。CT検査は被曝を伴いますが、治る癌を見つけることができます。まず、肺がんのCT検診を受けましょう。もし、異常がなければ、3~4年間はCT検査を受ける必要はありません。早期肺がんと思われる陰影が増大傾向を示すのに3年ほど掛かるからです。増大傾向を確認してから治療しても遅くはありません。またCT検査を行うと、肺気腫や肺線維症などの肺がんリスクの高い病気、近年増加している肺結核や非定型抗酸菌症といわれる肺炎が多く見つかります。

「すべからく肺がんはCTで迎え撃つべし」を合い言葉にCT検診を進めております。どうぞ、お気軽に受診、相談を頂きたいと思います。

 

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