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うみねこ通信 No.204 平成28年7月号

いざ手術!の前に、どうして歯医者に受診なの?
~周術期における口腔ケアとは~

歯科口腔外科医師 竹本 宣

皆さんの中に、これまで1度も病気らしい病気を経験したことがない、という人はいらっしゃいますか?おそらくそのような健康な方は、ほとんどいないでしょう。多くの方は、何らかの病気にかかってしまい病院で治療を受けたことがあるかと思います。中にはがんや心臓病などにより全身麻酔で手術をしたことがある、といった方もいらっしゃるかもしれません。今回はそういった、誰もが経験することになるかもしれない、全身麻酔で手術が必要になった場合の、お口のケアについて説明させていただきます。

平成24年の4月から、歯科の健康保険に「周術期口腔機能管理」という項目が新設されました。この「周術期」とは、がんなどの病気と診断されてからの、入院・麻酔・手術・治療・回復という流れ、一連の期間のことです。手術が必要になった場合は、この期間を①手術前 ②手術中 ③手術後といった3段階に分けられます。また、がんの治療に対して手術以外に行われている、化学療法や放射線療法の場合も同様に、①治療前 ②治療中 ③治療後の3段階に分けられます。「周術期口腔機能管理(口腔ケア)」とは、3段階の期間それぞれで、総合病院や地域の歯科医院において歯科医師や歯科衛生士が、患者さんのお口の健康を保つことなのです。今回は、全身麻酔で手術が必要になった場合の口腔ケアに関して、更に詳しく説明していきます。

もし、がんや心臓病などの大きな病気にかかってしまい、これから全身麻酔で手術が必要になった場合に、なぜお口の健康が関係するの?と疑問に思う方は多いと思います。その答えとして、以下の4つの点を挙げます。

<周術期口腔ケアのメリット>

1.術前に、著しい歯のぐらつきを発見できる点

  → 挿管チューブ挿入時の、動揺歯の脱落、食道や気管内への迷入予防

2.術後の肺炎リスクを低下できる点

  → 抵抗力低下時の、口腔内細菌・歯石・プラーク(歯垢)による術後の肺炎予防

3.術後の創部感染リスクを低下できる点

  → 手術部位の、口腔内細菌による術後の感染予防

4.術後の口腔疾患の発症リスクを低下できる点

  → 口内炎、口腔乾燥、口腔カンジダ症等の発症やその増悪予防

1.~4.について、それぞれ解説していきます。

1.に関して、全身麻酔で手術を受ける際に、患者さんはお口から喉にむかって気管チューブという管を挿入されます。その時、明らかにぐらぐらしている歯が気管チューブなどに当たって脱落したり、気管や食道内に入ってしまうアクシデントが起こる可能性があります。これを未然に防ぐために、手術前の歯科受診にて、必要に応じて動揺歯の抜歯やマウスピース(プロテクター)による固定などを行います。

2.に関して、お口がプラークや歯石などでひどく汚れていると、特に手術後では全身の状態が弱っていますので、お口の細菌が肺まで入ってしまい肺炎にかかる可能性があります。また1.でも説明した気管チューブが入る際に、お口の細菌まで一緒に気管や肺へ押し入れられることになります。お口をきれいな状態に保っておけば、このようなリスクを低下できます。

3.に関して、唾液とともに飲み込んだ口腔内細菌が、手術した部位に感染することにより、治癒が遅れる可能性がありますので、お口を健康なままで保つことが予防に役立ちます。

4.に関して、状態のよくない歯を放置していたり、汚れが付いたままの入れ歯をずっと使ってしまうことで、細菌感染によりお口の中が荒れたり(口内炎)、乾いた状態で細菌の数が増えるリスクが高まります。この予防にも、周術期口腔ケアは有用です。

結論として、周術期口腔ケアを行うことで、患者さんは安心して手術を受けられ、手術後の感染リスクを減らすことで入院期間を短縮でき、お口の不快症状を除去することで生活の質を下げずに治療に集中できる、といった利点があるといえます。

一番大切なことは、直近の手術予定の有無に関わらず、常日頃からお口を健康に保っておくように心がけることです。そうすれば、万が一の事態のときにも十分対応が可能といえるでしょう。普段からかかりつけの歯科を受診し、大きな病気にかかった場合には周術期口腔ケアを受けられることをお勧めいたします。

 

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