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うみねこ通信 No.150 平成23年12月号

学校管理下での学童の突然死について

小児科部長  金城 学


何となく恐ろしげなタイトルになってしまいましたが、今回は、現在の日本の学校管理下で年間どれくらいの子供たちが突然に命を失っているのかを説明することによって、学校心電図検診の大切さを理解していただければと思います。なお、ここでいう学校管理下というのは、登下校を含む学校生活下におけるという意味です。

結論から先に述べますと、小学校、中学校、高校全体で毎年、全国で70~80件の学校管理下での学童死亡があります。この数字は登下校時の交通事故や熱中症による死亡などを含んでおり、それらを除いた本当の意味での突然死は全体の50%程度と言われています。すなわち、学校管理下での学童の突然死は毎年、全国で40件くらい認められるということになります。この数字が多いか少ないかは議論のある所ですが、生来健康であった(または、健康であると信じていた)子供さんが突然亡くなってしまうと考えれば決して少ない数字ではないと思います。

それでは、突然死の原因はどんな病気でどんな状態のお子さんに多いのでしょうか。

最近の統計では学童100万人当たりの1年間の突然死の頻度は小学生0.4人、中学生2.5人、高校生4.2人であり、年齢が高い程突然死が多いという結果になっています。男子が圧倒的に多く、運動中の突然死が50%、運動直後が15%となっています。小学校高学年から頻度が増加し、中学校1年で急激に増加、高校1年で更に増加します。逆に中学校も高校も2年生以降では明らかな増加は認めていません。この理由は不明ですが部活の影響もあるのではと考えられています。すなわち中学校1年と高校1年で部活などによる急激な運動量の増加と質の変化が原因の一端ではないかと考えられているのです。但し、上記の通り残り35%は非運動時に起こっていることになりますので、部活だけが原因ではないことは確かです。

学童突然死の原因は心臓疾患が圧倒的に多いと言われています。一般に小学生突然死の70%、中学生の75%、高校生の85%が心臓が原因とされています。

突然死の原因となる心疾患には、先天性心疾患、不整脈、心筋症、心筋炎などがあります。先天性心疾患の場合はほとんどの例で事前に診断が確定されちゃんと病院で管理されているのですが、不整脈、心筋症や心筋炎などの心臓の筋肉の病気は発症が急なことがあります。初めての症状で死に至るということもあり得ます。しかし、不整脈や心筋疾患の場合は症状がない初期の段階でも予め心電図などの検査をすることで解る場合があります。そこで大事になってくるのが学校心電図検診です。八戸市を含め日本のほとんどの市町村では、小学校1年生と中学校1年生の春(場所によっては小学校4年生も)に学校内で心電図の検査を行います。八戸市の場合は、学校でとられた何千という心電図を6-7名の小児科循環器専門医が時間をかけて判定し、疑わしい例に関して全員で協議しながら要精査か否かを決めています。全員で集まって協議という所がキーポイントで、どんな些細なことでも見落としをなくそうと常々努力しています。しかし悲しいことに要精査といわれても二次検査を受けない例も毎年数件あるのが実情です。

学校心電図検診の究極の目的は学童突然死をゼロにすることです。残念ながら今の医療レベル、検診レベルでは防げない学童突然死もありますが、そのうちの何割かはちゃんと検診を受け、定期的なチェックを行っていれば未然に防ぐことが可能なのです。

AEDが学校に設置できるようになる平成16年以前には、毎年100件近い学童突然死がありました。確かにAEDの普及により死亡数は以前の半数程度に減少しAEDの効果は明らかですが、数字には表れないニアミス例(AEDの使用により死亡には至らなかった例のことです)の存在を忘れてはいけません。ニアミス例が全員正常に戻っているとは限らず、なかには重度の後遺症を残してしまうケースもあるのです。AEDはあくまでも応急処置の道具だと認識し、AEDの普及に慢心せずに、突然死の可能性がある状態をつくらないようにするにはどうしたらよいかを、家族、学校関係者、医療従事者が一丸となって取り組むことが一番大事なことだと思います。

大切なお子さんをそのような不幸から守るため、安心して過ごせる学校にするため、私達小児科医も常に啓蒙に心がけなければいけないと思っています。

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