青森労災病院 高精度放射線治療

高精度放射線治療

従来から行われている照射方法に比べ、病巣に正確に放射線を照射しながらも正常組織にあまり放射線を当てないようにする照射技術です。

それを実現させるため、画像誘導放射線治療を行います。

専用の放射線治療装置や計画装置、それらの品質管理がより重要となってきます

画像誘導放射線治療 IGRT (Image Guided Radiation Therapy)

2方向以上の二次元照合画像、三次元照合画像に基づき、治療時の患者位置変位量を三次元的に計測、修正し、治療計画で決定した照射位置を可能な限り再現する照合技術です。

これにより、より腫瘍に集中した治療でき、副作用を抑えることが期待されます。

回転しながら撮影しCT画像を取得し、治療位置を確認します。

 

左の図はそれぞれの画像の重ね合わせ

強度変調放射線治療 IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)

多方向から放射線の強度を変化させながら照射することで、病巣への線量を増加させながら、隣接する正常組織への線量を低減することが可能となります。

限局性固形悪性腫瘍が適応であり、大多数のがんが適応となります。

テキスト ボックス: 強度は赤(強い)⇔青(弱い)となり、各方向からの合算にて作成されます。

前立腺がん

前立腺への照射線量の増加しながら正常組織である直腸への照射線量を低減し、有害事象である直腸出血のリスクを減らすことが出来ます。

当院ではSpaceOARシステムを使用し、前立腺と直腸の距離を拡げ、より直腸への線量を低減しています。

SpaceOAR(ハイドロスペーサ)は3ヶ月程度維持され、半年程で体外に排出されます。

強度変調放射線治療・線量分布図上でのハイドロゲルスペーサー。
軸位断(a)、矢状断(b)の線量分布図上にハイドロゲルスペーサーが描出されている(水色)。
前立腺・直腸間スペーサーの存在により、直腸は全体的に高線量域から後方に外れて位置するようになり、直腸全体の線量低減に繋がった。

強度変調回転照射法 VMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy)

IMRTの応用型で回転原体照射に強度変調機能を加えた照射法。周囲正常臓器への影響を抑え、治療時間の大幅な短縮が可能となります。

SpaceOARを併用したVMAT

 

角度ごとの照射野形状の違いがよく分かる。

定位放射線治療 SRT (Stereotactic Radiation Therapy)

比較的小さい病巣に対し、通常の外照射よりも高い精度で位置決めを行い、放射線を病巣に集中照射する照射技術です。

これにより周囲の正常組織の照射線量を低減することができます

俗に「ピンポイント照射」などと称されます。

原発性脳腫瘍や転移性脳腫瘍が適応です。

脳転移

体幹部定位放射線治療 SBRT(Stereotactic Body Radiation Therapy

転移のない直径が5 cm以内の原発性肺癌、肝癌、腎癌や3個以内で,かつ他病巣のない転移性肺癌または転移性肝癌が主な適応です。

腫瘍は部位によっては10mm以上移動しますので、CTを用いて3次元的に移動量を評価し、移動量が大きい場合は当院ではAbchesという装置を用いて息止めで行ったりします。

転移性肺腫瘍

Abchesを用いた息止め照射

転移性肝腫瘍

3個同時に治療した症例

当院では事前に体内に金属マーカーを挿入し、治療位置を確認しています。

◇頭頸部癌

Ⅰ期喉頭癌(声門癌)を治療し1年半経過した現在、腫瘍は消失し副作用も認めていません。


医師のみなさまへ
青森労災病院医誌第30巻 限局性前立腺癌根治的放射線治療におけるハイドロゲルスペーサーの使用経験
青森テレビ テレビ診察室「高精度放射線治療」の放送内容(令和3年2月7日放送分)