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うみねこ通信 No.229 平成30年7月号

ヨード造影剤と造影剤腎症

放射線診断科部長(副院長)伊神 勲

腎臓は、一日に約150リットルの血液(原尿)を濾過して、最終的に1.5リットルの尿を生成することで、体内の老廃物、特に有毒なアンモニアなどの代謝物を濾過し、濃縮排泄しています。近年、CKDという慢性腎臓病の概念と病期分類(1から5)が定義されました。CKDは放っておくと、最後には末期腎不全透析へと進み、CKDの病期が進むほど、心血管疾患(高血圧、脳卒中、心筋梗塞など)の発症リスクが上昇します。CKDの原因にはさまざまなものがありますが、代表的な疾患は、糖尿病、高血圧、動脈硬化症などの生活習慣病に長期間罹患したあとに発症する場合や、慢性腎炎などがあげられます。2014年の透析患者の統計調壺から、透析導入の原因疾患をみてみると、その第1位は糖尿病性腎症(43.5%)、第2位が慢性糸球体腎炎(17.8%)、第3位が腎硬化症(14.2%)、第4位が原疾患不明(11.3%)となっています。

今では、体のあらゆる部位のX線造影検査として、ヨード造影剤が使用されます。憔界中では、1日に何百万人もの人たちが、ヨード造影剤を使用した検査を受けています。造影剤腎症とは、ヨード造影剤投与後、72時間以内に血清クレアチニン(筋肉の代謝物)が前値より0.5mg/dl以上または、25%以上増加した場合と定義されています。一般的に腎機能低下は可逆的で、血清クレアチニン値は3-5日後にピークに達した後、7-14日後に戻ります。しかし、場合によっては腎機能低下が進行し、人工透析が必要となる場合もあります。そしてCKD病期1~2の症状のない方は問題ありませんが、CKD病期3以上では、追影剤が腎症の原因の一つとなります。そして、国際的に確認された科学的根拠から、造影剤の投与量を最小限にすることが推奨されています。

ヨード造影剤のX線吸収効率は、CT画像のCT値(画像の白さを表す数値)に反映されます。造影剤に含まれるヨードはX線を吸収し、画像上で骨のように白く映し出されます。造影剤を血管内注射すると、X線写真やX線CTでは、その血管内腔が白く見えます。ヨードを構成するヨウ素原子の物理特性として、電圧の低いX線ほど吸収効率が高くなります。通常の120kVp(キロボルト)の電圧で管球から発生させたX線と比べ、lOOkVpのX線の時はCT値が1.28倍に、80kVpのX線の時はCT値が1.78倍になります。低電圧撮影でのCT画像では、ヨード造影剤をより強く造影することができます。このように低電圧のX線CTを用いると、lOOkVpでは造影剤を約8割に、80kVpでは約6割に減量できます。

昨年12月当院に導入されたX線CT装置は、この低電圧撮影が可能です。もちろん、患者さんの体型にもよりますが、X線の透過しやすい痩せた方や子供の造影CT検査では、80kVpの超低電圧撮影を行っています。投与する造影剤を減量することにより、造影剤腎症の発症を極力減らし、患者さんの経済的負担も減らすように努めています。

 

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