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うみねこ通信 No.223 平成30年1月号

インフルエンザ脳症の治療について

小児科部長 大高 雅文

小児科において、インフルエンザ脳症は重篤な後遺症を残す可能性を認める重要な疾患です。当科にて施行しているインフルエンザ脳症の治療についてお知らせ致します。

インフルエンザが流行中で、高熱を伴い、けいれん重積、意識障害、咳、鼻汁を認め、インフルエンザ脳症を疑った場合は、たとえ初診時にインフルエンザテストが陰性であっても、以下の、ⅰ)、ⅱ)の治療を速やかに施行しています。

ⅲ)、ⅳ)はインフルエンザ脳症としての治療ですが、たとえ熱性けいれん重積であっても、有効、有益な治療と考えられます。熱性けいれん、熱性けいれん重積の原因の一つとして、高炎症性サイトカイン血症が推定され、熱性けいれん、熱性けいれん重積の後遺症を軽減する可能性があるためです。メチルプレドニゾロンパルス療法施行により、炎症性サイトカインの血中濃度が低下し、解熱傾向を認め、けいれん発作が止まり易くなります。

また、熱性けいれん重積、インフルエンザ脳症にて、けいれん重積や脳浮腫が遷延する症例は脳虚血を伴っており、脳内のフリーラジカルが増加している可能性があり、エダラボン投与は合目的的であり、効果があると考えられます。

ⅰ)インフルエンザ脳症と診断したら、まず、けいれん発作、けいれん重積を、できるだけ速やかに止めます。
最初に、呼吸状態を観察しながら、ゆっくりとホリゾン(ジアゼパム)を静注します。
けいれん発作が止まらなければ、呼吸状態を観察しながら、ゆっくりとイソゾール(チアミラール)を静注します。
→その後、アレビアチン(フェニトイン)をシリンジポンプにて投与します。

なお、アレビアチン投与中にけいれん発作が止まらない場合、又はけいれん発作が再発した場合は、生理食塩水にて点滴ルートを流しながら、呼吸状態に注意しイソゾールを繰り返し投与します。

このけいれん重積発作の止め方には厳重な呼吸管理が必要で、治療開始時からの酸素投与の継続、バックマスクによる換気アシストや挿管の準備が必要で、医師が複数名必要と考えられます(できれば麻酔科医も)。

なお、急性脳症にて脳浮腫があると呼吸停止し易く、呼吸状態には厳重な注意が必要です。

ⅱ)けいれん発作が停止したら、直ちにインフルエンザウイルスの増殖を抑える治療を開始します。意識障害があると、イナビル、リレンザは投与が困難で、確実に点滴投与できるラピアクタが望ましいと考えています。

ⅲ)インフルエンザ脳症の原因は、インフルエンザウイルス感染によるサイトカインストーム、高炎症性サイトカイン血症と考えられています。高炎症性サイトカイン血症の改善、血液中の炎症性サイトカイン低下目的に、直ちにメチルプレドニゾロンパルス療法を開始します。

ⅳ)けいれん重積、急性脳症(脳浮腫)による、遷延する脳虚血により、脳内に増加していると推定されるフリーラジカルの除去目的に、エダラボンを投与します。

インフルエンザ脳症と診断した場合は、ⅰ)~ⅳ)をできるだけ速やかに、連続して施行しています。トータル約4~5時間で終了します。ⅱ)~ⅳ)は臨床症状、重症度、その臨床効果に応じて、3日間まで施行できます。

なお、点滴のルートを複数にすると、上記の一連の治療に要する時間を更に短縮することが可能です。

また、当科にての経験より、高炎症性サイトカイン血症を原因とする急性脳症の治療は、「速やかにⅰ)、ⅲ)、ⅳ)を連続して施行する」で良いと考えています。

もちろん、この一連の治療の開始に際して、その適応には慎重になる必要がありますが、頭部MRIにて明らかな異常(例えば壊死性脳症等)が出現すると、不可逆的な脳神経細胞の変化、障害が出現していると推定されます。

「できれば、頭部MRIにて、明らかな異常が出現する前に治療を開始したい。」と考えています。

インフルエンザ脳症、急性脳症の診断、分類のために、治療の開始を頭部MRI所見の変化(異常所見)が出現するまで待つのは、非合理的であると考えられます。なぜなら、急性脳症、インフルエンザ脳症の後遺症は、症候性てんかん、脳性麻痺、発達遅滞と、極めて重篤であり、ⅰ)~ⅳ)の薬の副作用とは全く比較にならないためです。

当科においては、神経学的所見で急性脳症、インフルエンザ脳症と診断し治療を開始する場合があります。

なお、上記の治療法は、特別な合併症(細菌性肺炎、呼吸不全、DIC、多臓器不全等)を伴わない場合の治療です。合併症を伴った場合は、臨床症状、検査データ、重症度に応じて、迅速に、できる限りの集中治療を施行する必要があります。

 

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