HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫ 平成29年4月号
前中央リハビリテーション部長 和田 昌一
今の日本で、リハビリテーションという言葉を聞いたことが無い人はいないのではないかと考えられる程に、津々浦々まで言葉は広まっています。でも、その意味については如何でしょうか。「理屈は必要ない」と言う人がおられるかも知れませんが、基本ですので、リハビリテーションの本当の意味を知った上で言葉を使うようにして頂きたいと思います。
次に示す文は1981年にWHOから発表された定義の日本語訳です。
「リハビリテーションは、筋力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。さらにリハビリテーションは障害者が社会に適応するための訓練を行うばかりでなく、障害者の社会的統合を促すために、全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。」
如何でしょうか?
病気やケガで手足に障害が生じた場合、一生懸命に訓練を受けると思います。多分、この訓練の事だけを指して「リハビリテーション」という言葉を使っている人が多いと思いますが、そうではありません。訓練を受けて通常の生活(勤労生活も含めて)を送る事ができるまでに治癒(回復)すれば良いのですが、残念ながら、なかなか100%完全に元に戻らないのが現実です。
でも、もしそうなった場合にでも、人間としての尊厳(人として尊重される生き方)を持って様々な場面での生活(家庭生活、学生生活、社会生活、職業生活 等々)ができるように色々な対策が取られています。
領 域 | 施設・対策等 | |
---|---|---|
1)医学的リハビリテーション | 病院 診療所 研究所 など | |
2)教育的リハビリテーション | 療育センター 院内学級 など | |
3)職業的リハビリテーション | 福祉事務所 授産施設 など | |
4)社会的リハビリテーション | 厚生施設 ユニバーサルデザイン など |
このように、手足を動かしたり歩く練習を行うリハビリテーションは、1番上の「医学的リハビリテーション」に含まれる「リハビリテーション医学」の、更にその中の「理学療法・作業療法・言語聴覚療法」と呼ばれる部分で、非常に広い意味を含む『リハビリテーション』という言葉からすれば極めて狭い役割しか担っていないことが分かると思います。
ちなみに、医学的リハビリテーションとリハビリテーション医学の違いについてですが、医学的リハビリテーションとは総合的な障害に対する医学的側面を指す言葉で、学問や技術の内容を規定する言葉ではありません。鍼灸・マッサージ・カイロプラクティックなどが含まれます。一方、リハビリテーション医学とは、明確な内容を持った学問や技術の体系であって、運動障害と高次脳機能障害を主な対象に障害の本態と治療法を研究する医学専門分野のことです。
リハビリテーション医学の基本は「生活」です。以前に「生活リハビリ」と云う言葉が流行しましたが、リハビリテーション医学の目標自体が生活機能の向上(各個人が様々な生活場面の中で、必要に応じて色々なサービスなどを利用して、自分らしく生活していく能力を高めること)ですから、何も声高に『生活』と叫ばなくてもいいのです。
以上の事を理解して下されば、他の「教育的」、「職業的」そして「社会的」リハビリテーションにも目が向いて、普段、何気なく見過ごしてきた様々なリハビリテーション対策にも気が付くのではないでしょうか。