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うみねこ通信 No.181 平成26年7月号

感染性胃腸炎

第三消化器内科部長 石橋 文佳

細菌、ウイルスなどの病原体(病気の原因となる微生物)により嘔吐、下痢を起こす病気を感染性胃腸炎といいます。ウイルスであればノロウイルスやロタウイルス、細菌であればサルモネラ、病原性大腸炎、カンピロバクターなどが原因として挙げられます。食品や水を介しての経口感染(一次感染)、吐物、便を介しての接触感染(二次感染)により発症します。

詳しい症状などにつき、ウイルス性、細菌性に分けてお話ししていきます。

◎ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス腸炎は、ここ数年11月から3月を中心に大流行していますので、ご存知の方もいると思います。感染力が強く、少量のウイルス量でも感染します。生カキ、サラダ、飲料水などを介して感染し、学童、成人、老人施設に集団発生することが多いです。潜伏期(病原体に感染してから発病するまでの期間)は2~3日で、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱などの症状をもたらします。最近では、患者さんの便からノロウイルス抗原を迅速に検出するキットが普及し、30分ほどで診断できるようになりました。脱水に対する点滴などの対症療法で、たいていは3~4日の経過で改善します。

ロタウイルス腸炎は、冬期の乳幼児下痢症の原因として最多です。嘔吐は1~2日続き、下痢は白色を呈するのが特徴です。

◎細菌性胃腸炎

食中毒とも言われ、70~80%は7月から10月に発生します。食品に付着増殖した原因菌、またはその産生する毒素を食品とともに摂取して起こります。発生するにはかなり多量の菌量を要し、一部の菌を除いてはヒトからヒトへの感染は起こりにくいと言われています。

サルモネラ腸炎は、家畜に広く分布しているサルモネラ菌が、卵、食肉などとその加工品を汚染することによって発生します。潜伏期は12~48時間、主症状は発熱、腹痛、下痢で、しばしば血便を呈し、嘔吐を伴います。下痢の回数は1日数回から10回以上、発熱も38~39℃と症状が強いのが特徴で、経過も1週間程度と長いです。乳幼児や抵抗力の弱い人では敗血症になることがあります。

病原性大腸菌(下痢を起こす大腸菌)には4種類ありますが、数年前に大流行した腸管出血性大腸菌EHECによる腸炎についてご説明します。二次感染もみられ、わずか10~100個の菌数でも発症する可能性があります。汚染源は牛であり、70~90%がO157です。初期は泥状、水様便ですが、1~2日後に激しい鮮血便を呈し、急激に尿が出なくなってくることがあります。このような症状が出てくるようなら、早めの受診をお勧めします。

カンピロバクター腸炎は、肉、牛乳などが原因で、潜伏期は1~7日と長いのが特徴です。小児下痢の原因の20%を占めます。

感染性胃腸炎についてお話ししてきましたが、予防できるにこしたことはありません。一次感染予防としては、帰宅時、食事前、トイレ後の石鹸での手洗いの徹底、調理での十分な加熱などが挙げられると思います。二次感染予防としては、感染した人の便や、吐物に直接触れず、使い捨ての手袋やキッチンペーパーなどを使って処分することが必要です。これから胃腸炎が起こりやすい季節を迎えますが、家族の中に一人感染者が出てしまうと、家族全員に広がってしまうという例が多く見られます。日頃から一人一人が感染予防を心がけることが大切です。

 

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