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うみねこ通信 No.125 平成21年11月号

自然気胸について

外科部長  山田 芳嗣

今回は自然気胸(ききょう)についてお話します。左右の肺は胸腔(きょうくう)とよばれる空間に収まっていますが、通常は肺が膨らんでいるため、胸腔内には肺とわずかな胸水しかありません。気胸とはなんらかの原因で胸腔内に本来ないはずである空気がたまる状態をいいます。一番多いのが肺から空気がもれて、胸腔にたまっている状態です。肺は柔らかいため押されると、容易に押しつぶされます。そのため胸腔に空気がたまるとその空気によって肺が押されて小さくなります。つまり、肺から空気がもれて、肺が小さくなった状況が気胸と考えてさしつかえありません。

気胸はいろんな原因でおこりえますが、そのなかでも自然気胸は、10歳代後半から30歳代で、やせて胸の薄い男性に発生することが多く、重要な疾患です。肺の一部がブラと呼ばれる袋になり、ここにある時穴が開き発症します。外傷性気胸(交通事故やナイフで肺に傷ができる)のように、明らかな理由もなく発生するので、これを自然気胸と呼びます。

若年者(とくに男性)が突然の胸痛、呼吸困難、咳を訴えたとき、自然気胸を疑い、胸部レントゲン検査で肺の虚脱を確認し、診断にいたります。空気が大量に漏れると、肺は完全にしぼみ、さらに心臓も圧迫されショックにいたることもあります。また、きわめてまれですが同時に左右肺の気胸を起こすと大変です。

気胸と診断された場合どのように治療するか述べます。気胸にも軽度のものから、ただちに治療を要する重症もあり、その程度により治療方針は異なります。軽度気胸で症状がほとんどなければ、入院しないで安静にし、外来で胸部レントゲン検査を適時行い経過観察することも可能です。軽度の気胸で肺の穴が再び開かなければ、漏れていた空気は自然に消失します。1~3週間で元に戻るでしょう。軽度気胸でも、痛みや呼吸困難の症状があれば入院していただいた方が安心です。中等度気胸や高度気胸のときは、入院し胸腔ドレナージを行います。胸腔ドレナージとは、胸腔にたまったものを外に排出することです。具体的には、胸に局所麻酔を行い、管を胸腔内に挿入し、胸腔にたまっていた空気や新たに漏れた空気を外に排出します。肺が膨らみ、管から空気もれが無くなったら、管の抜去を行います。管の抜去後、肺の膨らみが良好なら退院です。

以上の治療法は保存的治療と呼び、気胸の原因であるブラに対する治療は行っていません。気胸の手術治療について述べます。気胸治療の問題点は、再発することがあることです。手術の目的は原因であるブラを切除し、再発の可能性を低くすることにあります。

方法として、以前から行われてきた胸を10cmほど切開する開胸手術と、最近行なわれるようになった胸腔鏡手術の2つがあります。胸腔鏡手術では、胸に1~2cmほどの切開を3ヶ所行い、ここから照明付きカメラ(胸腔鏡)と肺を持つ道具、肺を切る道具を挿入します。肺の病変部(ブラ)を切除して、手術後の液体や空気を外に出すように胸腔ドレナージをして手術を終了します。

胸腔鏡下手術は開胸手術に比べて利点と欠点があります。利点は傷が小さく、美容的に優れていること、手術当初の痛みが開胸に比較して少ないことです。欠点としては、開胸に比べ気胸の再発率がやや高いという報告もあります。そのため各施設で様々な工夫が行われています。

ではどのような場合気胸に対して手術をするのでしょう。手術をしない気胸でも保存的治療で50~70%は再発しません。手術をお勧めするのは、以下のような状況です。

  • 気胸に対する胸腔ドレナージを行っても空気の漏れが止まらない場合
  • 気胸が再発した場合
  • 左右両側の気胸の場合
これらの場合には手術を考慮すべきでしょう。

自然気胸は良性の疾患で、治療成績は良好ですが、再発例などときに治療に難渋することもあります。専門施設(呼吸器内科、胸部外科)での治療をおすすめいたします。

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